『上意討ち 拝領妻始末』のオリジナルは既に1967年5月27日に映画が公開されていて、1992年にはテレビ東京にてテレビドラマ化されていて、今回のドラマはそれらのリメークということになる。私は映画もテレビドラマもおそらく見ていないと思うので、今回が初めてではないかと思う。
物語は、会津藩馬廻り役の笹原家の当主・笹原伊三郎(田村正和)の長男である笹原与五郎(緒形直人)に、藩主・松平正容(大杉漣)の側室・いち(仲間由紀恵)を妻として下賜されるという藩命が下され、笹原伊三郎は何とかお断りしようとする。しかし、笹原与五郎がお引き受けする決意をしたので不本意ながら笹原家はいちを嫁として迎えることになる。笹原伊三郎はいちの性格を心配していたのであるが、姑のすが(梶芽衣子)によく耐え、笹原与五郎とは夫婦として仲睦まじく暮らしている姿を見て、よき嫁をもらったと喜ぶようになる。
ところが、1年後世嗣が急死していちが生んだ男子が世嗣となることが決まったことから、将来の藩主の生母が家臣の妻として暮らしていることの外聞の悪さから、いちを藩に返上せよとの藩命が下ることになる。上意とはいえあまりにも人の心を知らぬ非道な仕打ちと、笹原伊三郎と笹原与五郎は家名よりも家族の愛を守る一念から忠義を捨てる決意を固める。そして、藩との命を懸けた戦いに挑む。
藩の上層部と親類縁者一同からの圧力に屈せずその思いを貫き通した姿勢と態度は見上げたものがあった。あれだけの懐柔や脅しがあって信念を貫き通すことはほとんど不可能に近いことだったのではないかと思われる。しかし、その結末は悲劇である。いちが短刀で自害し、笹原与五郎は斬り殺され、笹原伊三郎は友の浅野帯刀(松平健)を斬り殺し、笹原伊三郎自身は銃殺されてしまう。殺伐とした風景しか残っていない苦くて嫌な終わり方である。信念を貫き通した爽やかさはない。だから、何だったんだろうと疑問が残ってしまう。主要な関係者が死んでしまって、あれで良かったのか、いちには藩に返ってもらうしかなかったのではないかとも思えてしまうのである。当事者がそれを選んだわけだから部外者は何も言うことではないのかもしれないとも思う。
【キャスト】笹原伊三郎(田村正和)、いち(仲間由紀恵)、笹原与五郎(緒形直人)、高橋外記(北村有起哉)、きく(田畑智子)、笹原文蔵(石黒英雄)、柳瀬三左衛門(橋爪功)、松平正容(大杉漣)、笠井三之丞の母(藤真利子)、小谷庄兵衛(笹野高史)、笹原監物(津川雅彦)、すが(梶芽衣子)、浅野帯刀(松平健)
【スタッフ】原作:滝口康彦『拝領妻始末』、脚本:橋本忍、音楽:加古隆、監督:藤田明二[テレビ朝日]、プロデューサー:田中芳之[テレビ朝日]、加藤貢[東映]、榎本美華[東映]、江平光男、制作:テレビ朝日、東映